●四国の町づくり整備と言えば「梼原(ゆすはら)町」!!
もうすでに20年以上になる町づくり整備で「高知県梼原町」は有名だが、行く機会はなかった。東京オリンピックのメインスタジアムの設計でさらに注目を浴びた隈研吾氏による公共建築で知られてきた。著名な建築家による公共建築物が、地域振興の役割を果たすことは、香川県が特に先駆けてきたことだ。丹下健三氏による公共建築物は、当時の地方自治体としては稀有な取り組みであったし、今は直島町がそういう実践でリードしてきている。
しかし私見なりに町づくりには”佇まい”が必要といつも思っている。昔ながらの歴史建築群を再整備した町でなくても、新たな整備をするにあたってこそ重要な感性であろう。梼原町はまさに後者として”佇まい”が感じられるのではないかと感心する次第。
四国内にも愛媛県:内子町の白壁の街並み、大洲市の大洲城と肱川川岸の風情、徳島県脇町のうだつの上がる街並み、香川県琴平町の金毘羅山の参道など誇らしい町並みは継承されているが、そうした保存型は言うまでもなく、むしろ再整備での新しい方向性にこそ、佇まいを忘れてはならないだろうと。
●隈研吾氏の建築物は目玉であり、誘発剤としても秀逸であろう!!
隈氏と梼原町のつながりは話題となり周知の事で省かせてもらうが、あらためて建築デザイン的なピンポイントとして知っていたことと現地の実際は大きく違っていたなぁと改めて痛感した。つまり旧の街並みの再整備=相当大掛かりにもかかわらず”佇まい”がよく浸透していることだ。完全統一とは言えないが、現実で出来得るレベルとしてはよくできているなぁと感服した次第。
何気に写真を撮り、1月2日でも空いているお店探しで交差点にいると、地元の方が犬を散歩がてら近づいてきてくれていろいろ説明を受けた。愛犬のブルドッグが散歩を催促するのをとどめての説明で恐縮至極だった。まちづくり整備では反対的な方が多い高齢層だが、この方は明確に事業年度や事業予算までそらんじれる具合で、小さな町といえいかに行政サイドが周知を丹念にした成果のだと伺えた。
隈氏の業績は言うまでもなく、しかしそれほど件数が多い訳ではない。あくまで看板であっても整備における演出効果は、行政手腕や地域住民の覚悟がなくては無理、そういう面でよく整っていることが素晴らしいかと。
●”佇まい”簡単なようで難しい。デザイン性とともに、地域の方の心映えも重要!!
メインストリートの拡幅工事も電線などもインフラは地中化しすっきりと。十分すぎる幅員は観光効果を計算し、活集約した町機能や行政機能を発揮している。小さな町の有利さで、町役場、町の駅(=物産所&宿泊所)、「維新の道:坂本龍馬脱藩の起点の町として、維新群像の町を標榜」の史跡ポイントが、至近距離に配置された魅力とともに建築&環境デザインが優れることで、観光入り数は相当多いと感じられた。店舗も少ないが、本格派を目指した店が多い感じだ。
1月2日ゆえにほとんどが閉店していたが、本格派の珈琲専門店が開店していて人気のようだったし、町の駅は地場産品がたくさん置かれて賑わいも伝わった。しかし地方の売らんかな!呼び込まんかな!という範疇ではなく、自分の時間で仕事ができる人、感性を澄ませて物づくりしたい人、東京ではなく世界を視野に入れれる人には、数年住んで事をなせるかという気がしてくる町でもあると感じた。
流行は追わない、しかし鈍感ではない。形式を超えた心映え・・・維新の群像をテーマにしたこの町は、京や江戸、果ては会津、逆転して薩摩と維新の激変が続く中で、これほど田舎の町からでも視点は確かに時代を見据えていたのだから・・・。
今関わっている町の事業でもこの佇まいを大切にする思いはますます強くなった。合掌