• 2020.02.08 Saturday
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久しぶりの“葉室 麟”2冊

今年の年度末は例年以上に厳しい。つまりハードであり、唯一の楽しみである読書もままならない。といっても時代小説オンリーに近いが。今回は、作家の立ち位置もそうだが、作品の舞台もそうなので敢えて紹介とした。

創業期からこの仕事でのポイントとして、若手に言い続けてきたが、結果的には頓挫、思いが伝わらない。つまり次代を切り込む感性のような仕事では東京に及挫折が多い。そういう時にこそ、こういう本を読んでほしいと。

 

「 霖雨 」

江戸時代後期、天領:日田にあって有数の私塾として名を馳せのが、広瀬淡窓の咸宜園である。江戸時代も幕藩体制が安定すると全国で優れた儒学者や国学者、施政者が輩出されるのだが、広瀬淡窓もまたその一人である。

日田の豪商の家に生まれ、蒲柳の身ながら半世紀にわたり講義を続けた稀有の人である。代官の差配に翻弄されながらも、商家と私塾を財政的に支える実弟に恵まれた。5000人以上の門下生を送りだし、その中には長州藩の大村益次郎、

蘭学者の高野長英なども挙げられる。身分を問わず公平な試験での進級などの開明な教育理念は鄙においても尊厳を放っている。

霖雨とは長雨のことでイメージとしては鬱々とした感もある。作物に長雨は禁物だが、人が育つための土壌=咸宜園、教育内容=浸透する思想や文化性が慈雨と思えばぴったしか。

広瀬淡窓の師弟一体の学びは“・・・君は川流を汲め 我は薪を拾わん”と詠んで終わる。書評は広瀬県知事であるが子孫であり、まさに知性の系譜と思った次第。淡窓の俗名は寅之助といい、吉田松陰も寅之助、偶然にしても面白い。


「 千鳥舞う 」

北宋期の画家:宋テキが洞庭湖周辺の景勝地を描いたことにちなみ、我が国でも「金沢八景」「近江八景」など歌に詠まれ、庭園となり絵画ともなった。福岡黒田藩の御用絵師の一派:衣笠家の門下生“春香”という女流絵師を主人公に話は展開する。幕府御用達の絵師:狩野派から派遣された気鋭の絵師と出会いから不義密通へ。破門となりながらのちに許されて豪商の依頼で「博多八景」を描くことの物語である。

すでに鎌倉期に博多八景は詠まれており、商人が財政的に力をつけた江戸期に絵として残すという背景がある。一つ一つの景勝地にそれぞれの人間模様=特に痴情、離別、かなわぬ思いなどが織りなされていく。葉室ワールド=武士の生き様描写には敬服しているが、女性観は大体読めるので書店では購入を躊躇していた。が、実に大きく予想を外される。引退後は絵描きの世界へ戻りたい願望の私には、女流でもなんでも絵描きの人生観は興味が尽きない。

見事に描き切っているなぁと、読後感は格別であったが、これさえも福岡というローカルの物語である。福岡市博物館にこうした博多八景の絵が残るとのこと、是非とも拝観したいところ。それゆえにこの「千鳥舞う」を読んでいけば楽しみも倍加であろう。



ローカルでの視覚的、表現的、感覚的な仕事はハンディだらけであるが、知性を伴うことでその意味合いは大きく変わる。しかし一夕にしてまとえるものではないが、そういう意識なくしてはかなわない話でもある。日々仕事のストレスがきつい中、知性はどこにあっても輝きは持つと思えることで乗り切れそうである。

小橋祭り
先日、お気に入りの備前焼 "薄々シリーズ" を求めて、岡山天満屋に行ってきました。

薄々シリーズはこんな感じの、"ぎゅっ"と握ったら壊れてしまいそうな繊細な作品で、正しくは「パーティングラインシリーズ」といいます。


これ(上)が一目惚れをした3年ほど前の薄々シリーズ、こちら(下)は今回の薄々シリーズ。さらに薄く軽くなっているように感じます。



この薄々シリーズの作家、小橋順明さん。現代美術の作品も作っておられ、倉敷で開催中のモンカーダ国際芸術祭にも出品されていました。


水面に映るグラスファイバーの揺らぎが心地よい『わたしたち2015』という作品。解説によると、


とのことです。
月に帰ったかぐや姫も、いつかは死を迎えるのでしょうか?
「わたしたちとは何なのか。」という類いのことを、私は考えたりしませんが、死に際はこの揺らぎの様に、ゆらゆらと微睡みの中に消えてゆければよいなぁと思いました。


今回のブログのタイトル『小橋祭り』というのは、ちょうどこの頃、京都のお茶屋さん『一保堂』でこんな催し物もあったからで、


同時期三カ所開催中のまさしく小橋祭りです。
結局、京都へは仕事の都合で行けなかったのですが、これからもあっちこっち動き回って、私のお出掛けする理由をつくっていただけたらと思います。




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