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「死して皮(=飛び切り極上の著作という皮)を残す」・・・葉室麟という傑出した作家

福岡に生まれ、福岡で育ち、福岡で死す・・・。時代小説ファンでは傑出した作家であることは周知の事。しかし一般的知名度は、藤沢周平氏ほどではないかもしれない。時代小説の魁偉:飯嶋和一とも世界観が違うが、私は大好きで感銘を覚える作家である。
多くの傑作を残し、その業績や人柄を惜しまれ2017年に没した。“西の藤沢周平”とも評されるほど、北部九州=豊後、豊前、築後、筑前の江戸時代を舞台にした時代小説の作品群は、まさに正鵠を得た敬称かとも思う。
 
●葉室流の傑作・・・「蜩ノ記」「秋月記」は私的には彼の作品の真骨頂だと思っている。理不尽、不条理を描いて右に出る作家はいないという、重くも暗い作品も多い。しかし読後は清涼であり背筋を伸ばしたくなる。凛とするといってもよいか・・・地方にあっても知性や品性は磨かれる。「霖雨」「千鳥舞う」などは国文学者、画業者の生き方、存在感とともにその深さに強さも感じる。また案外と女性が主人公の作品や女性の視点での作品に、秀作が多いのも特色である。
 
●果てる者、朽ちゆく者、破れし者のあわれと、それも孤高、高潔な意思の人物・・・を見事に描く。この点で年の最後を飾るにふさわしい、12月=たった1回の社内ブログの言い訳である。これには11月末に死去した父へのレクイエム(鎮魂、悔恨)でもあると思う次第。
 
●人はどういう時に、どういう本を読むのだろうか?・・・今回「葉室麟」の作品で挙げたのは、「弧篷のひと=小堀遠州」、「黒龍賦=海北友松」、「津軽の双花=辰姫と満天姫」の3作である。


★「弧篷のひと」・・・茶人として作庭家で歴史に名を成す。が、戦国武将であり殿様でもある。武家茶道の聖祖:千利休の十大弟子の一人でありながら、作庭(=ランドスケープ)家としても一流、何より武家である。彼の生涯を描くには、あまりに当時の歴史上の有名人が登場しすぎ、目まぐるしい。彼の生涯がかすみそうになるが、多くの武将や権力者:天下人を通じて、また多くの茶人が辿る数奇な運命も含めて、まさにすさまじい人間模様を描いて緩みない。


★「黒龍賦」・・・織田信長に、羽柴秀吉に滅ぼされた近江:浅井氏の3本柱といわれた海北一族。敗軍側の習いとして一族の多くが処罰されたが、若くして仏門にいた友松はなんとか生き永らえた。武将としての天秤を持ちながら仏門で悶々と修行。武を怠らずいつでも還俗して武士として戦場に立つことも夢見ていた。ただ運よく画才も相当なもので、時の画壇:狩野派に警戒をされるほどの画力も併せ持った。友松を取り巻く武人や絵師の盛衰が面白い。


★「津軽の双花」・・・石田三成の娘:辰姫(=幼くして北政所“寧々”の養女として育てられ一命を残す)は津軽藩二代目:津軽信枚に嫁す。しかし徳川幕府により満天姫(=家康の養女として育つ。安芸の福島家へ嫁ぐも離縁させられ)との婚姻で正室の座を追われ、飛び地の領地:上州大舘で。大舘御寮と称される。長男を生むことで、早世したが満天姫の配慮でその長男を3代藩主へ押しやる。


●この3作品で特筆されることは、戦国期から徳川幕府の黎明期にかけて、権力者や武将の生きざまと、絵師や茶人の世界観が見事に描かれ、そこには凄まじい人間関係が綾なしていることである。特に主人公ではないのだが、3作品とも「明智光秀」、「石田三成」という、いわばこれまでの歴史上ではネガティブなイメージだった二人が、様々に関係してくるから面白い。すべて当時は敗軍〜負け戦の武将ながら時の人。400年以上たってもネガティブな評価、悪人としてこれまで語られてきた。
 
ところが来年からのNHK大河ドラマ「麒麟がくる」の主人公は、明智光秀である。当然「石田三成」も少しは出てこようか?信長を本能寺に討った中心人物は明智家家老の斎藤利三。すぐさまの弔い合戦で秀吉軍に敗れた。しかし処刑場で斬首され晒された首を哀れと感じ、奪取したのが海北友松。その斎藤利三の娘が後に三代将軍家光の乳母となる春日局。
石田三成も家康に斬首されたが、息子は炎上する大阪城から脱出し津軽へ逃げ延び、やがて家老職へ。娘もその縁で先の正室へ。
 
●絵師の世界も狩野派が、権力者の信長や秀吉はじめ、家康そしてそれにおもねる各寺院や武将によって、独占的に絵の注文を得、台頭し圧倒的に画壇を独占した。しかし尾形光琳率いる琳派や、長谷川等伯の一族、個人として孤高の境地を開く海北友松、伊藤若冲、俵屋宗達など狩野派に目の仇ともされた。長谷川一派は中でも最も辛酸であった。
 
 
長くなったが、どうだろう・・・表面的ではつながらない、当時の武将や芸術家の人間模様と関係図から少し私の言いたいことを読み取っていただけただろうか?私には今まさに葉室麟氏の描いた作品の世界観と重なるのである。
経営者としての今やこれからの悩み、デザイナーではなく絵描きを選ぶべきだったかの反省、あれこれと打ち込んでこの現状の忌々しさ・・・“敗れし者”と重ねて、葉室氏の作品の3作がとてつもなく深く痛切さを伴っての読後だったのだ。死去した父の戒めを思い起こされるこの頃でもある。合掌

 

 

  • 2020.02.08 Saturday
  • 14:55
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