マニアしか行かない、荒砥(あらと)城。
千曲川を見下ろす山地にたたずむ、古代山城=戦国期後期の城で砦といった雰囲気。この地は信濃の有力豪族:村上氏の管轄地で多くの山城が築かれ、なかでも荒砥城は村上氏の重臣:山田一族によって守られる有力な拠点だった。特に川中島での幾度にもわたる攻防に、その存在感をとどめてきた。城好き、歴史ファンも多くいるが、こうした中世型の山城への訪問者は少ない。しかしこの日もシニア世代夫婦や若者の一人旅で、この辺鄙な城跡を訪ねてくるのが、なんともうれしくもあり驚いた次第。
峠を登り料金所を通過し、数分で山頂に。逆木の柵を通りながら、主殿や家来の共同棟、見張り用の井楼などが、昔の野武士の息遣いが伝わる。躍動する下克上の歴史も、こうしたところが起点となったことが強く感じられ面白い。
また特筆すべきは、NHK大河ドラマ「風林火山」のロケ地として、この荒砥城を整備したことで現在の史跡公園につながっている。狭く急な山道で機材搬入や撮影セットを組む事など、多くの苦労がしのばれる点も。
麓の町は鄙びた温泉街。戸倉上山田温泉というあまり有名ではないが、存外に旅館の多さに驚く。香川県の塩江温泉では太刀打ちできない軒数や格式の高い店があるのだ。これは大発見かと。