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「葉室 麟」という作家と直木賞
今回、「至極つまらない凡庸な作品ばかりが続くので選考委員を辞退する」とのたまった石原東京都知事の発言で、少し話題が増えた芥川賞と直木賞の発表。あまたある文学賞の中でもあいかわらず「芥川賞と直木賞」だけはメディアの注視を浴びる度合いが違う。賞金は他の文学賞と変わらないのだけれども。確かに選考委員が常にベストなメンバーかどうかはなかなかに判断しづらい。それは美術賞でも音楽賞(=クラシック系)でも似たようなものだろう。また石原都知事のような本人著作は駄作も駄作、作家などとは恥かしいが、批評家としての眼力があるやも知れず、一概に人気作家の選考委員がよいわけでもあるまいが。ただ今回のああいう捨てゼリフはいただけない。批評家は厳しくも作家に対し謙虚に批評せねばならない。同じ作家である選考委員は、恐るべきライバルが登場したとなれば、誉めるもよし、けなしてつぶそうとするもよしだが・・・。

前置きはこの位にして、今回は好きな作家で時代小説では西(=ご本人が福岡の人だから)の藤澤周平とも言える境地に立った感がある「葉室 麟」氏が選考された。ふてくされ会見で大変目立った芥川賞作家:田中氏とともに5度目のノミネートでの栄冠だ。時間がないことで分野が違いすぎるとほとんど読まない直木賞や芥川賞作品。しかし久し振りに今回は新刊本で、葉室麟氏の「蜩(ひぐらし)ノ記」を文庫本が待ち切れずに買って読んだ。

書評はあらゆる意見が出ているのであまり記載しないが、葉室氏の著書をほとんど読んできたので、やはり完成域に達した作品であることは間違いない。特に彼の文章には時々に短歌や句が散りばめられる妙がある。知性がほのかに香る良さがあるのだ。間に合わせの造詣では繕えない品性を感じ、それがまた良いと思う。

私は涙して読んでしまった「壬生義士伝」は浅田氏の作品の中でも大好きな作品であるが、彼がこれまで選考委員として葉室氏の作品に期待しつつも酷評を出していたという経緯も知った。・・・「いのちなりけり」「銀漢の賦」などは少し甘さが残る点もあったが、何気ない中級や地方の藩と武家の勤めのあり方へのこれまでにない物語を生みだす構成力の渋さが光っていた。




ただ短編だが「乾山晩愁」などは秀逸だ。「秋月記」から断然光りを帯びてきた感じで、素人同然の私にも彼の作家としての高揚感が強くなっていてのこの受賞だ。今回は浅田氏も絶賛していたが、なるほど、なるほど、うん、うんと読み込めて一気に物語に引き込まれていった。福岡の人は自身の地域を、こういう時代小説の名手が物語として風土や人の心の機微を文学にして紡いでいることは誇らしいのではないだろうか?香川県にも「菊地寛」が生まれているが、余り地域性と関係ない。

これからもますます楽しみであるであるが、最後に気になるのは賞金である。毎年:それも2回のことなので予算も大変だろうが、「芥川賞」が新人作家の登竜門ではなく中堅作家を認める代表的賞であるなら、賞金=100万円は少ないのでは?と思う。賞金額以上に社会的価値やメディア露出度という副産物があるというが、作家としての認知は他の文学賞の方が実力を判断している信頼感がある。葉室氏や田中氏の様に5回も待たされるなら、格別の賞金額=芥川賞、直木賞の権威にふさわしい=例えば300万円とか・・・で良いのでは?と思ってしまう。続くのかどうか危ぶまれているポプラ社の2000万円は法外、ばかばかしい賞金設定でしかも初回がタレントの受賞と話題にはなったが、こういうのは別として、他の文学賞の回数より多く、しかも同程度の額ならもうそろそろ方法を変えてでも?と思わぬこともない。

地元観音寺の夏祭りの「踊りコンテスト」では数十組の中から、グランプリチームには賞金100万円が贈られる。私は出し過ぎだと思うし、その賞金のため(=準グランプリやその他の受賞も含めると何百万円になる)に地元の多くの企業がいつも渋い顔をして協賛金を拠出しているのが裏事情。それでも100万円である。受賞作家はそれで本が売れて印税収入が増えるので?となるが・・・。回数を少なくしてより権威づけてくれた方が文学界のためになりそうでは?とも思うがどうだろうか?石原都知事の捨てゼリフは嫌味だが、候補作品が多すぎるのも微妙だし受賞作家もその後にほとんどが埋没している現実にも、彼の捨てゼリフも冷静に耳を傾ける余地があると感じる。

藤澤周平氏の山形、葉室麟氏の福岡をはじめ、私には格別の存在である飯島和一氏のこんなところに?という地方があらゆる構想によって作品化され、着目されることにこれからも期待したいと思いつつ。葉室麟氏の決して若くない受賞は、今、社会の悩みの種でもある早期退職者の希望の星であるとも思うからだ。真似られるレベルではないが、私もこの世界で少しは彼に見習って最後まで気を吐きたい。合掌
  • 2020.02.08 Saturday
  • 00:10
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2012/05/30 9:30 PM, 今井 wrote:
「蜩ノ記」がラジオドラマで放送されます。
NHKFM青春アドベンチャー全10話です。
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