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日本人の美徳は沈没したのか?
 さて、今回のお題目、書き込みの順番を飛ばしてしまったこともあって少々時期外れの感もあるが、世界一に輝いた女子サッカー、なでしこジャパンの話題から。岡山湯郷ベルに所属する宮間あや選手のちょっといい話。決勝戦の相手はアメリカ代表チームだったのだが、ゴールキーパーのホープ・ソロ選手は、かつて宮間選手がアメリカに移籍した時代のチームメイトだったそうだ。ご存知の通り、アメリカとの決勝戦のラストはPKによる決着。普通に負けても当然悔しいだろうけれど、PKでの敗戦はゴールキーパーにとってはさらに悔しいものになるだろう。そして日本チームの優勝が決まった瞬間、宮間選手は自分たちのチームの歓喜の輪にすぐ入らず、ソロ選手の元に駆け寄り言葉をかけたそうだ。戦前、圧倒的有利と言われながらまさかの敗戦、ソロ選手の落胆の激しさは予想するまでもない。そして宮間選手は自分たちの勝利の喜びよりも前に、かつてのチームメイトへの心配りを優先した。そしてソロ選手は「勝ったのはあなたたちなのだから、遠慮なく喜びなさい」と宮間選手を日本チームの輪の方へ押し戻したのだという。このエピソードはソロ選手が帰国後、アメリカのテレビ番組に出演した際に明かされた。

自分たちの喜びよりも、まず負けた相手を思いやる。武士道精神といっていいかどうかは分からないけれど、何か心に残る。大会後、なでしこジャパンのメンバーのルックスを揶揄したコメントをツイッターに書き込んで批判を浴びた不届きな輩もいたらしい。確かにスポーツ選手とはいえ注目を集める存在だから、ビジュアルをどうこう言いたくなる気持ちも分かるけれど、あの大舞台で相手への思いやりを忘れない宮間選手は誰がどう言おうと美人すぎる。まあ、個人的には川澄奈穂美選手が好みだったりするが…いや、いや失礼。


ここ数ヶ月、著名人が亡くなるニュースがやたら耳に入る。もちろん著名人であろうが無かろうが、高齢で病気になったり、末期がんなんかを患えば誰だって命を落とす。なぜ気になるかと言えば、亡くなる著名人の中でも全盛期をよく知る人の割合が増えたからだ。ここ数ヶ月を振り返っても、例えば原田芳雄さん、宮尾すすむさんとかの死去のニュースは、若い世代の人からすれば「あ、そう」とスルーだろうけれど、やはり全盛期を知っている世代からみれば「う〜む」と唸ってしまうニュースになる。そして「また昭和が遠くなるな〜」などと感慨にふけってしまうのだ。そして、自分自身の年齢が確実に彼らに近づいていることに今更ながら気づいて軽くショックを受けるということになる。

そんな中でも僕が最も驚いたのはSF作家、小松左京さんの死去のニュースだ。小松左京さんと言えば、その代表作は「日本沈没」。1973年に発表された本作のタイトルは、たとえ小説を読んだことが無くても知らない人はいないに違いない。発表当時、僕は確か中学生だったが、とにかく凄まじい反響だった。小説自体は空前のベストセラーになるし、映画、テレビドラマ、ラジオドラマ、連載漫画と、ありとあらゆる媒体がこぞって取り上げた。もちろん、僕も友人たちと夢中になって読んだ記憶がある。

この小説、タイトル通り、地球の地殻変動により日本が海の底に沈没するまでのストーリーなのだが、小松左京さんの弁によると、当初は日本が沈没した後、国土を失った日本民族がどのように世界で彷徨うことになるのか、までを描く予定だったらしい。ところが、実際に筆を進めて行くと「日本を沈没させる」ことは思いのほか大変で、沈没のその後までを描くことができなくなってしまったそうな。それでも構想から完成まで実に9年、その間も地質学、地震学はどんどん進歩していくから、その都度書き直していかなければならない。荒唐無稽に思える「日本の沈没」を徹底してリアルに描いているという「日本沈没」の魅力はそこから生まれている。

そのせいか、話題の中心はどうしても日本が沈む、というスペクタクルな部分になってしまう。しかし、その側面だけでは「日本沈没」の世界観は十分には語れない。小説のクライマックス、地殻変動での日本沈没を最初に予見した田所博士と、日本民族の脱出計画を資金面でバックアップした渡老人が二人きりで会話するシーンがある。長野県山中の渡老人の別荘、地鳴りが響き、風が舞う中、二人は既に日本列島と運命を共にする決意を固めている。数ページにわたり二人が国土を失った日本民族の行く末を語り合うシーンは圧巻である。機会があればぜひ読んでいただきたい。

日本人は日本列島に守られて生きて来た単一国家である。母親に甘える子供のように、我々は日本の国土を愛し、頼ってきた。草花も、水の流れも、すべてを含めて日本列島だ。だからいつでもそこに帰ることができた。外で傷ついたり、ダマされたりしても、純粋であることが一番大切なことだと、信じることができた。旅人は帰る場所があるから強くなれる、希望を持つことができるという。その帰るべき日本列島が無くなってしまったらどうなるのか。日本人は日本人でいることができるのか。純粋で、汚れを知らない美しい心を持ち続けることができるだろうか。

田所博士と渡老人の会話の要旨はこんな感じだったと記憶している。小松左京さんが表したかったのは、日本人の拠り所である日本国土が無くなったときに、日本人はどうなるのか、だったのだと思う。そのために「日本を沈没」させる必要があったのだ。もちろん、核戦争や隕石の衝突とかで日本の国土を壊滅させることはできる。しかし、その場合、壊滅しても国土は残る。いつの日か帰ることはできる。そうではなく、日本国土を完全に消滅させなければならなかった。だからこそ「日本沈没」なのだ。衝撃的なタイトルであったが故に「日本沈没」という言葉のみが一人歩きした感があるけれど、それは決してメインテーマでは無い。


なでしこジャパンの宮間選手ととった行動は、外国人から見れば「人が良すぎる」行為に写るに違いない。誰もが自分の主張を最優先する国際社会の中では、恐らく損をすることになるんだろう。しかし外国の人たちはそれを「日本人の美徳」として評価する。東洋の小さな島国、美しい日本の風景と重ね合わせて、そこに思いを馳せてくれる。しかし、そこに日本列島が無くなってしまったとしたらどうだろうか。そして我々日本人はダマされ傷ついたときに何を頼ればいいのだろうか。「日本沈没」が意図するところ、そう考えると結構深いのだ。

幸いなことに日本国土はまだ我々の足元にある。しかしながらここ数年、日本人であることの意義を問われる事件があまりにも多い。沖縄の基地問題、中国や韓国との軋轢、ガタガタの政権運営、そして今年の大震災。そんな時期に小松左京さんが死去されるというのも何とも考えさせられる。ネット上では大震災と「日本沈没」を重ね合わせての意見も多いようだが、「日本沈没」を深読みすれば、決して大震災だけが例えられる話ではないことが分かる。それは日本人としてのアイデンティティの沈没の恐ろしさであり、日本文化が徐々に侵食されていく不安なのである。


先般、大相撲にエジプト出身の力士が誕生するかも知れない、というニュースを見た。彼は「相撲はスポーツではなく人生だ」と熱く語り、相撲部屋への入門を直訴しているようだ。外国人ながら相撲道をよく理解している、何の問題も無いのでは?という意見が多いようだが、エジプト人との付き合いの経験があるという人がこんなコメントを寄せていた。エジプト人はまず人に謝らない、復讐を何よりの美徳と考える、もちろんエジプト人全てがそうではないだろうが、彼らに大相撲の力士としての品格を求めるのは不可能だ、という。

以前、日本に住むフランス人のインタビューをテレビで見たことがある。フランス人の店員はまず客に謝らない、謝るとこちらの負けだと考えるかららしい。我々日本人には考えられないことだが、厳しい国際社会の中ではそれが当たり前なのかも知れない。

「日本民族はこれから苦労するよ」日本沈没のラストで渡老人が言うセリフである。また田所博士はこう告白する。「最初、日本が沈没するかも知れないと感じたとき、私は多くの日本人に、この国と運命を共にして欲しいと思いました。多くの日本人が逃げ遅れ、この国と共に最後を迎えて欲しいと。」

それを聞いた渡老人はそんな田所博士の心情をよく理解した上で、最後にこう呟く。

「わしは純粋な日本人ではないからな、わしの父親は清国の僧侶じゃった。」

このシーン、初めて「日本沈没」を読んだ中学生だった頃は正直、よく分からなかった。でも、今はよく理解できる気がする。年齢のせいなのか、時代のせいなのかは分らないのだが。


そんなこんなで近いうちに「日本沈没」を久しぶりに読み返してみたいと思ったりする今日この頃。あ、でもその前に水嶋ヒロ先生の「KAGEROU」を読まないと…。


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